2017年8月19日土曜日

ザ・ゴール - 企業の究極の目的とは何か

読了日:2017/7/24

当時TOC理論がもてはやされ、猫も杓子もTOCって感じだったが、今にして思えば制約条件下の最適化なんて当たり前の話である一方、自分の身の回りがみんな効率的かといえばそうではない。 アレックスがあれほどジュリーにフォローできるのか理解に苦しみつつも、ハイキングでのハービーやサイコロマッチゲーム、ジョナの助言と一緒に悩んだ仲間たち、工場のスループットの劇的な向上など、フィクションとしても面白く、引き込まれた。ストーリーで戦略を学ぶという点では三枝匡の戦略三部作と同じ方式で入りやすいが、まとめにくい。



著:エリヤフ・ゴールドラット
翻訳:三本木 亮
出版:ダイヤモンド社
発売日:2001/5/18

機械メーカーの工場長である主人公のアレックス・ロゴを中心に繰り広げられる工場の業務改善プロセスを主題にした小説。通常、アメリカでベストセラーとなったビジネス書は、すぐに日本語に翻訳されるものだが、本書は世界で250万部売れたにもかかわらず、17年もの間日本での出版だけが認められなかった。いわば「幻の名著」である。

   長引く経営の悪化、工場閉鎖までたった3か月の猶予期間、多忙な日々のなかないがしろにしてきた妻との離婚の危機…。アレックスは、あまりの危機的状況にすっかり意気消沈していた。その前に、モデルは著者と目される恩師、ジョナが現れ、彼にアドバイスを与える。工場を救うために業務改善に挑む登場人物の苦悩や目標達成の興奮が伝わってきて、ビジネスの醍醐味を感じさせるストーリーだ。

   本書は小説ではあるが、その内容は恐ろしいほど実践的で、会計情報の正しい見方や落とし穴、「効率化」の陰に隠された諸問題を浮き彫りにする。魅力的なストーリーの中に複雑な業務改善のノウハウがわかりやすい形で盛り込まれており、ビジネスパーソンやマネジャー必読の内容である。

   また本書は、問題解決にあたってはゴールを共有し、信念を貫くことが重要であること、数字の陰に隠された実態を見抜くことの重要性、情報共有化の意義など、経営において重要な示唆も与えてくれる。

   本書が長い間日本で出版されなかった理由については、「解説」で著者エリヤフ・ゴールドラットのコメントが引用されている。それによると、「日本人は、部分最適の改善にかけては世界で超一級だ。その日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」というのが出版を拒否し続けた理由らしい。

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